目覚めれば野方事件

 その日は陸上部の飲み会の日だった。忘年会だったと思う。天神で飲んで二次会にも行き、帰宅しようとしたときには23:00を回っていた。

 私は友達数人と天神−六本松−原−系統のバスに乗った。バスの中は夜遅いにもかかわらずほぼ満員であった。途中六本松で友達が降りていき、別府橋−別府二丁目とバスは進んだ。私が降りるバス停はその二つ次の別府四丁目、いよいよ自宅に近づいていた。

 しかしこの時すでに重大な事態が発生していた。私はその時半分居眠り状態であったのだ。

 そして気がつくとバスは停留所に停車していた。乗客は私ただ一人、そこは終点、野方営業所だった。

 とりあえず、私はいかにもそこで降りるのが当然であったかのようにバスを降りた。ドアが閉まりバスが営業所の中に入っていく。周りはまっくら、どっちが北かもわからなかった。時計を見た。0:10だった。もちろんこの時間に引き返すためのバスは無い。

 しまったという思いがじょじょにこみ上げてきた。車のヘッドライトが時折通り抜けていく。灯りの消えた通りが妙に寂しく見えた。