恐怖のゴムひも当て

 これは中学1年生の時の話だったと思うが、担任の先生は自分が所属していた陸上部の顧問をやっている男の先生であった。

 ある日、教室内の床に輪ゴムが落ちていた。それを拾って、少し離れた友人Yに向けて打ち込む。当たったかどうだかはわからないが、すかさず友人Yはその輪ゴムを拾って打ち返して来た。授業中ではなく、休み時間中のため特に問題のない、他愛もない遊びであった。この時は。

 そのうち同じ遊びをクラスの男子8人ぐらいがするようになっていく、そうなると輪ゴムが足りない。教室に落ちている輪ゴムだけでは足りないのである。そこで、家から輪ゴムを学校に持ってくる。輪ゴムそのものは例えば週刊少年ジャンプ等の持ち込み禁止品ではなかったので、特に問題はない。輪ゴムの打ち合いは数日続いた。

 そのうち、1つの輪ゴムでなく、複数の輪ゴムを繋げて打てばより遠くに飛ぶことに気づく。輪ゴムのパワーアップである。最大で5個ぐらいは繋げて飛ばしていたように思う。威力の増した輪ゴムが教室内を休み時間に飛び交っていた。

 そして、遂にその日が訪れる。

 自分ではなかったが、だれかが放った輪ゴムが関係のないある女子に当たり、女子が泣いた。そこに担任の先生が登場。

 事情を知ると、「今まで輪ゴムで遊んだことがある男子は、罰として学校の周囲を8周走ってこい!」

 ついに怒られた。

 走ればいいんでしょ。とばかりに校舎から出て走り始める。しかしここで一つ担任の意図しないことが起こる。走り始めた男子は競争するのである。だれが一番速いか。長距離パートだった私は走るのは当時苦でもなんでもなかった。競争は友人Yと2人の争いになったと思う。

 良い練習になった。

 走るという行為は人によっては罰にはならないということを学んだ1日であった。