お金のかからないプレゼント交換事件

小学4年生の時だったと思う。私の通った小学校は1学年3クラスだった。そのうちの自分たちがいた1クラスの中で、クリスマス会をすることになった。

クリスマスらしい提案が担任の先生からあった。
「もうすぐクリスマスなので、みんなでプレゼント交換しましょう。家にあるもので、お金をかけずに100円ぐらいのものいいのでみんなでプレゼントを持ち寄って、くじを作って当たった番号のものを受け取るというプレゼント交換をしましょう。」

帰宅して身の回りでプレゼントになりそうな物を探す。うちにはあんまりおもちゃがなかった。ファミコンはUくん家、MSXはKくん家、鉄道模型ならYくん家。友達の家に行くたびにまぶしく見えた時代だった。

100円でプレゼント交換するなら、今はダイソーという迷うことない100円ショップが普通に世の中にあふれているがが、当時はコンビニもない時代。100円ショップなんて当然なかった。

困って一応親に相談してみたが、おまけのウルトラマンが欲しくてねだったスーパーのウルトラマンソーセージすら一度も買ってもらったことがない親に相談しても解決策が見つからない。

そして思いつく。「100円ぐらい」という響きに目をつけた。

ちょうど家から少し離れたYくん家近くの駄菓子屋で買ったときに当たったお菓子のラムネの当たりくじを大事に保管していた。当時はくじ付きのお菓子がたくさんあってたまに買うときは楽しみにしていた。

「そうだ、100円ぐらいの条件に合致するし、これでいいだろう。」条件を満たしたプレゼントを身の回りで発見し安堵する。クリスマス会の当日、プレゼント交換が始まる。

人気があるのはぬいぐるみで、とても100円では用意できなさそうなプレゼントで、当たった女子が盛り上がっていた。

そして、私の用意したプレゼント「ラムネ当たりくじ100円相当」にある女の子が当たった。
女の子は袋から取り出してそのプレゼントを確認した。

そして、泣き出した。

「えっ、ダメなん。100円相当なのに。」私の心の中の叫び。

結局、先生が何か別のものを追加でその女の子にプレゼントすることでその場は収まったように思う。

私はその時に思った。
「結局、何円相当とかじゃなくて、もらってうれしいお金のかかるものを用意できる人がすごいのか。100円でいいって言っても、100円相当じゃだめなんだ。」

プレゼント交換の時にぬいぐるみを用意できるお金持ちになりたい。そう思ったことは今でも覚えている。ハングリー精神の芽生えには価値のある経験だった。