失われたタイムカプセル事件
小学校6年生の頃、卒業後の20歳の成人式の時に堀りだそうということで、担任のT先生からタイムカプセルを埋めるという提案があった。
小学校の頃というのは、先生が言えば大体その通りになるもので、特に疑問も感じることもなく皆がタイムカプセルに入れるものを持ってきて学校内のプール脇の花壇付近に埋めることになった。
その当時何を持っていったかは忘れてしまったが、自分を含めてクラスの皆が何かを持ち寄り、プラスチック製のクリアケースのようなものにそれを入れ、ビニール袋で梱包して穴を掘って埋めた。
しかし、今思えば不思議なことがある。埋めたとはいえ、どこに埋めたという目印を残さなかった。普通、学校でタイムカプセルを埋めるなら、目印の石とかつけるはずであるが、各学年3クラスあるうちの、1クラスが担任の先生の発案で、特に学校に許可もとらずに埋めたのではないか思われるような、ただ埋めただけであった。もっとも花壇自体が広いわけではなかったので、後で探してもすぐに見つかると思っていた。
そして時は過ぎて成人式の行われた日の夕方、小学校にはタイムカプセルを埋めたときの6年生で同じクラスだった旧友が10人ぐらい集まって、探し始めた。私もその場にいたのだが、探しても見つからない。
どこにあるか目印がなく曖昧。学校に許可を取って掘ってるわけではないので、はたから見れば、学校にスコップを持ち込んで掘り返している不審者集団に見えたはずである。
埋めた時の責任者とも言える昔の担任の先生も小学校に来ることもなく、しばらく探して見つからなかったので、掘り出すのをあきらめたのである。
埋めてから数十年が経ち、プラスチック製の箱が健在ならば、今も小学校の花壇の下にそれは埋まっているはずである。失われたタイムカプセルが。
タイムカプセルを埋める時は、目印をお忘れなく。