校内テレビ放送事件

 今思えば珍しかったかもしれないが、小学校では週に1回ぐらい給食の時に校内でテレビ放送をしていた。職員室の隣にテレビ放送機材を備えた放送室があり、校内に声による放送だけでなく、テレビ放送も可能であった。

 放送を担当するのは生徒。5、6年生になると、みな何かの学校運営に関するちょっとした委員になるのだが、「放送委員」なるものが存在し、放送委員が普段の校内放送全般を行っていた。

 放送委員は人気が高く、例年希望者が定員を上回るため、選抜試験が行われていた。試験では国語の教科書を朗読してきれいに読めるか試験された。おそらく学業成績なども加味されていたと思う。

 私も試験を通り、放送委員に選ばれたのだが、この仕事がなかなか面白かった。午前の休み時間や昼休みに音楽をかけたり、土曜日の一斉下校の際は最後まで残って帰りの音楽をかけたり、日々の校内放送をマイクを通して話したりしていた。

 その中でも給食時間のテレビ放送は週に1回程度あって、どういう番組を作るかその内容も含めて先生にほとんど相談無く勝手に決めていた。

 最近結婚した先生がいたらインタビューをするとか、今日は6年生特集として、各学年3クラスあったクラスの代表を集めて自己紹介みたいなことをしたりとか、ネタに困るとよくやっていたのは、「紙芝居」の朗読だった。4人ぐらいで紙芝居をカメラに向けて読むのだが、放送室にある紙芝居の数も多くなかったので、結局同じよう紙芝居ばかりしていた。

 そんな状況で、私が企画したのは、先生数名によるクイズショウだった。クイズの内容も自分たちで考える。かわいらしい内容のものから、少々無謀なマニアックな設問まで自由であった。

 自分が作った設問で覚えているのは、「体育館にある1階から2階に上がるための階段は合計何段?」、映画ネバーエンディングストーリーの主題歌を流した後で「この歌に含まれている日本語の歌詞は何と言っている?」とか結構マニアックである。小学生が小学生の心で気になることをクイズにするため、よくそんなの学校も許してくれてたなと思う。

 放送委員は皆がアナウンサーでカメラマンでディレクターで声優で照明担当で音声担当でスイッチャーだった。

私も何度かやったが、アナウンサーは、放送の始まりにまぶしいほど照明を前に座って、カメラを前にこう言って放送を始めるのである。

「お口は給食、お耳は放送、みんなの友達、SSH、ただいまからお昼の放送をはじめます。」